お知らせ
2016/06/29
インターネットモニタリング
2016年5月31日、フェイスブック、ツイッター、ユーチューブ、マイクロソフトの4社は、欧州連合(EU)のヘイトスピーチ対策の行動規範に同意し、ヘイトスピーチのコンテンツについて24時間以内に削除等の措置をおこなうことなどを欧州委員会と合同で発表しました。 「欧州委員会とIT企業、違法なネット上のヘイトスピーチに対する行動規範を発表」(駐日欧州連合代表部 2016/5/31) http://www.euinjapan.jp/resources/news-from-the-eu/20160531/095439/ このとき、欧州委員会のプレスリリースとは別途に、4社合同の声明として発表したものが下記です。 http://ec.europa.eu/justice/fundamental-rights/files/hate_speech_code_of_conduct_en.pdf 今回は、その合同発表の声明文の内容を検討し、欧州におけるヘイトスピーチに対する取り組みを理解する一助としたいと思います。
まずは、各センテンスを日本語訳と共に見ていきましょう。 まずはタイトルです。
CODE OF CONDUCT ON COUNTERING ILLEGAL HATE SPEECH ONLINE
タイトルを詳しく訳すと、「ネット上の不法なヘイトスピーチに対抗する際の行動規範」となります。この場合の「不法」は、各国の法律に照らした厳密な判断というよりも、欧州委員会で定めた規範(後述)を指すと考えるのが妥当ではないかと思われます。
Facebook, Microsoft, Twitter and YouTube (hereinafter “the IT Companies”) – also involved in the EU Internet Forum – share, together with other platforms and social media companies, a collective responsibility and pride in promoting and facilitating freedom of expression throughout the online world;
フェイスブック、マイクロソフト、ツイッター、ユーチューブ(以下「IT4社」という)─ EUインターネットフォーラムにも参加 ─ は、他のプラットフォーム企業やソーシャルメディア企業と共に、インターネット上の表現の自由を向上・促進させることに共同責任を負い、誇りをもってこれを履行する。
フェイスブック、マイクロソフト、ツイッター、ユーチューブの4社の合同声明の形式で、文書が発表されています。
また、この取り組みがこの4社に留まるものではなく、ほかのソーシャルプラットフォーム企業、ソーシャルメディア企業にも広がるものであるように記されているのは、そのようになることへの強い期待を4社および欧州委員会が抱いていることをあらわしていると思われます。
The IT Companies also share the European Commission’s and EU Member States’ commitment to tackle illegal hate speech online. Illegal hate speech, as defined by the Framework Decision 2008/913/JHA of 28 November 2008 on combating certain forms and expressions of racism and xenophobia by means of criminal law and national laws transposing it, means all conduct publicly inciting to violence or hatred directed against a group of persons or a member of such a group defined by reference to race, colour, religion, descent or national or ethnic origin. The IT Companies and the European Commission also stress the need to defend the right to freedom of expression, which, as the European Court of Human Rights has stated, “is applicable not only to “information” or “ideas” that are favourably received or regarded as inoffensive or as a matter of indifference, but also to those that offend, or disturb the State or any sector of the population”.
IT4社は、欧州委員会およびEU加盟国と共に、違法オンライン・ヘイトスピーチに対処することを確約する。違法ヘイトスピーチとは、「特定の形態・表現による人種差別や排外主義を、刑法・国内法の規定で対処することに関する枠組決定(2008/913/JHA、2008年11月28日)」において定義されているように、人種、肌の色、宗教、出自、国籍、民族によって区別される特定の集団あるいは集団内の個人に向けられた、暴力や憎悪を扇動する公然の行為を意味する。また、IT4社および欧州委員会は、表現の自由の権利を擁護することの必要性を強く主張する。表現の自由は、欧州人権裁判所が判断したように、「好意をもって受け取られるか、無害なものあるいは関心のないものと認識される『情報』や『考え』だけでなく、国家または特定の人びとを誹謗するものや、不都合を与えるもの」にも適用されるべきである」。
ここで記載されている「2008/913/JHA」とは、2008年に欧州委員会から発表された規範を指します。
http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2008:328:0055:0058:en:PDF
これは法的拘束力を持つものではなく、実際に何をヘイトスピーチとし、何を禁止するのかはEU加盟各国の国内法にゆだねられています。
Broader society and in particular civil society organisations (CSOs) also have a crucial role to play in the field of preventing the rise of hatred online, by developing counter-narratives promoting non-discrimination, tolerance and respect, including through awareness-raising activities.
一般社会、特に市民社会組織にも、啓発活動などによって非差別、寛容、尊重を促すカウンターナラティブを形成し、オンライン上の憎悪の広がりを阻止する重要な役割がある。
ここで言う「カウンターナラティブ」とは、ヘイトとは反対の「非差別、寛容、尊重」というキーワードで表される概念や価値観を発信する行為と考えるのが妥当でしょう。
The IT Companies support the European Commission and EU Member States in the effort to respond to the challenge of ensuring that online platforms do not offer opportunities for illegal online hate speech to spread virally. The spread of illegal hate speech online not only negatively affects the groups or individuals that it targets, it also negatively impacts those who speak out for freedom, tolerance and non-discrimination in our open societies and has a chilling effect on the democratic discourse on online platforms.
IT4社は、オンラインプラットフォーム上で違法オンライン・ヘイトスピーチがウイルスのように拡散するのを防止するための、欧州委員会とEU加盟国の取り組みを支援する。違法なオンライン・ヘイトスピーチの拡散は、対象となる集団や個人に悪影響を与えるばかりでなく、我々の開かれた社会において、自由、寛容、非差別を訴える人びとにも悪影響を及ぼし、オンラインプラットフォームにおける民主的対話を阻害する要因にもなる。
4社がヘイトスピーチの拡散防止に取り組むことの意義が述べられています。それは、民主的対話に資する活動だとしており、表現の自由を制限する意図があるわけではないことを示しているものと思われます。
ヘイトスピーチ規制と表現の自由のいずれを優先するのかについてはさまざまな議論のあるところであり、国や地域によっても温度差が大きいのが実情です。
The Joint Statement issued by the extraordinary Justice and Home Affairs Council of 24 March 2016 on the terrorist attacks in Brussels underlines that “the Commission will intensify work with IT companies, notably in the EU Internet Forum, to counter terrorist propaganda and to develop by June 2016 a code of conduct against hate speech online”.
2016年3月24日開催の特別司法・内務理事会の特別理事会において発表された、ブリュッセルのテロ攻撃に関する共同声明において、「欧州委員会が、IT企業、特にEUインターネットフォーラム参加企業との連携を強化してテロリストのプロパガンダに対抗していくこと、また、2016年6月までに反オンライン・ヘイトスピーチ行動規範を策定すること」が表明された。
この共同声明については、駐日欧州連合代表部のホームページにおいて、その抄訳と原文を確認することができます。
http://www.euinjapan.jp/resources/news-from-the-eu/20160324/100355/
In order to prevent the spread of illegal hate speech, it is essential to ensure that relevant national laws transposing the Council Framework Decision 2008/913/JHA are fully enforced by Member States in the online as well as the in the offline environment.
違法ヘイトスピーチの拡散防止のためには、理事会の枠組決定(2008/913/JHA)を法制化した関連国内法が、EU加盟国のオンラインおよびオフライン環境において完全に適用・施行されることが不可欠である。
While the effective application of provisions criminalising hate speech is dependent on a robust system of enforcement of criminal law sanctions against the individual perpetrators of hate speech, this work must be complemented with actions geared at ensuring that illegal hate speech online is expeditiously acted upon by online intermediaries and social media platforms, upon receipt of a valid notification, in an appropriate time-frame. To be considered valid in this respect, a notification should not be insufficiently precise or inadequately substantiated.
ヘイトスピーチを犯罪とみなす規定が有効に適用されるには、ヘイトスピーチの加害者に刑法上の制裁を科す強力な制度が確立される必要がある。オンラインの媒体やソーシャルメディア・プラットフォームは、違法オンライン・ヘイトスピーチに関する有効な通知を受理した場合、適切な時間内に速やか対応することによって、この取り組みを補完・支持しなければならない。上記の通知が、有効なものであるためには、正確さが欠けた、あるいは裏付けが不十分なものであってはならない。
EUの主要加盟国の間でも、何をヘイトスピーチとするか、どこまで規制するかについては、それぞれ法律での定めがことなります。が、日米に比べ、EUのヘイトスピーチ対策は手厚いと考えて良いでしょう。
すでに4社は全世界的にヘイトスピーチ排除の条項を利用規約等に盛り込んでおり、それは、ヘイトスピーチ規制に関して必ずしもEU加盟国ほど手厚い法制度を用意していない日米についても適用されています。4社は、法的な裏付けの無い状態においては、自主規制という形でヘイトスピーチ排除をおこなわなければならず、その場合、言論の自由を制限するプラットフォームであるという批判を一民間事業者として受けなければならない立場に立たされます。
また、ヘイトスピーチに該当する可能性のある投稿等に関する情報提供が第三者からもたらされた場合に迅速に対応することを約束する一方で、その情報提供が不完全であったり不正確であった場合には十分な対応ができない旨を述べています。
The IT Companies underline that the present code of conduct is aimed at guiding their own activities as well as sharing best practices with other internet companies, platforms and social media operators.
IT4社は、現在の行動規範は、自社活動の指針であると同時に、他のインターネット企業、プラットフォーム、ソーシャルメディア運用者とベストプラクティスを共有することに主眼が置かれたものであることを認識している。
ここでも繰り返し、4社だけの取り組みではなく、広く他社でも同様の取り組みがおこなわれるよう、強い期待をしていることが述べられています。
The IT Companies, taking the lead on countering the spread of illegal hate speech online, have agreed with the European Commission on a code of conduct setting the following public commitments:
IT4社は、違法オンライン・ヘイトスピーチの拡散防止の取り組みを主導する主体として、欧州委員会との間で、以下の事項を公的に確約する行動規範について合意した。
以下、4社が採用する行動規範が列挙されています。
• The IT Companies to have in place clear and effective processes to review notifications regarding illegal hate speech on their services so they can remove or disable access to such content. The IT companies to have in place Rules or Community Guidelines clarifying that they prohibit the promotion of incitement to violence and hateful conduct.
• IT4社は、自社サービス上の違法ヘイトスピーチに関する通知を点検・検討するための、明確かつ効果的なプロセスを構築し、当該コンテンツを除去、またはアクセスを遮断できるようにする。IT4社は、暴力や憎悪行為の扇動禁止を明記したルールあるいはコミュニティ・ガイドラインを策定する。
各社のヘイトスピーチ排除に関する条項は以下のページで確認できます。
Facebook
https://www.facebook.com/communitystandards#
Twitter
https://support.twitter.com/articles/253501
Youtube
https://support.google.com/youtube/answer/2801939
MSN
https://www.microsoft.com/ja-jp/servicesagreement/
• Upon receipt of a valid removal notification, the IT Companies to review such requests against their rules and community guidelines and where necessary national laws transposing the Framework Decision 2008/913/JHA, with dedicated teams reviewing requests.
• IT4社は、有効な除去通知を受理した場合、自社ルールやコミュニティ・ガイドライン、また必要に応じて、枠組決定(2008/913/JHA)を法制化した国内法に照らして、当該除去請求を点検・検討する。この作業は、専任の請求点検・検討チームを以って行う。
ヘイトスピーチに対する個別の検討は、専門のチームでおこなうことを明記していますが、これが、ヘイトスピーチに関する専門チームか、利用規約違反全般に関する専用チームかは読み取れません。
• The IT Companies to review the majority of valid notifications for removal of illegal hate speech in less than 24 hours and remove or disable access to such content, if necessary.
• IT4社は、違法ヘイトスピーチ除去を求める有効な通知について、その大半を24時間以内に点検・検討し、必要に応じて、当該コンテンツを除去する、あるいはアクセスを遮断する。
ヘイトスピーチに該当する投稿等については、通報があってから24時間以内には概ね対処することを宣言しています。つまり、「投稿されてから24時間」ではなく、「通報を受けてから24時間」ということです。
もちろんこれは、後述のとおり、通報の内容の充足性や正確性が担保されるという前提においてであると思われます。
• In addition to the above, the IT Companies to educate and raise awareness with their users about the types of content not permitted under their rules and community guidelines. The notification system could be used as a tool to do this.
•上記に加え、IT4社は、自社ルールやコミュニティ・ガイドラインで禁止されているコンテンツの種類について、自社のユーザーを教育・啓発する。通知システムをこの目的のために活用することも可能である。
事後的に対応するばかりでなく、ユーザーに対する啓蒙をおこなうことも約束しています。
• The IT companies to provide information on the procedures for submitting notices, with a view to improving the speed and effectiveness of communication between the Member State authorities and the IT Companies, in particular on notifications and on disabling access to or removal of illegal hate speech online. The information is to be channelled through the national contact points designated by the IT companies and the Member States respectively. This would also enable Member States, and in particular their law enforcement agencies, to further familiarise themselves with the methods to recognise and notify the companies of illegal hate speech online.
• IT4社は、加盟国当局とIT4社の間のコミュニケーション、とりわけ、違法オンライン・ヘイトスピーチの除去やアクセス遮断の通知に関するものについて、その通知提出手順の情報を提供する。これは、コミュニケーションの速度と有効性を向上させるためである。情報は、IT4社と加盟国がそれぞれ指定するナショナル・コンタクト・ポイントを経由してやり取りするものとする。これにより、加盟国、特に法の執行機関は、違法オンライン・ヘイトスピーチを認識し、企業に通告する方法について理解を深めることができる。
前述のとおり、4社がヘイトスピーチに対して迅速に対応するためには、第三者からもたらされる情報の内容の充足性や正確性が充分に担保されている必要があります。
このため、どのように情報のやりとりをおこなうのか、すりあわせをあらかじめおこなっておくことが必要であるということです。
• The IT Companies to encourage the provision of notices and flagging of content that promotes incitement to violence and hateful conduct at scale by experts, particularly via partnerships with CSOs, by providing clear information on individual company Rules and Community Guidelines and rules on the reporting and notification processes. The IT Companies to endeavour to strengthen partnerships with CSOs by widening the geographical spread of such partnerships and, where appropriate, to provide support and training to enable CSO partners to fulfil the role of a “trusted reporter” or equivalent, with due respect to the need of maintaining their independence and credibility.
• IT4社は、暴力や憎悪行為の扇動をその専門家たちが大規模に働きかけるコンテンツについて、通知、注意喚起がなされるように促す。これに関して、特に、市民社会組織との連携を強化する。そのために、各企業のルールやコミュニティ・ガイドライン、報告・通知プロセスのルールに関する明確な情報を提供する。IT4社は、当該市民社会組織との提携を地理的に拡大し、強化する。また必要に応じて、連携市民社会組織が「信頼できる報告者」あるいはその同等者としての役割を果たすことができるよう、当該組織の独立性および信頼性を尊重しつつ、支援・研修機会の提供に努める。
第三者からもたらされる情報の質的量的充足性や正確性を担保するためには、情報源となるであろう市民社会組織が信頼に足るものでなくてはなりません。 信頼のおける市民社会組織が能力的にも充分に活動できるように、4社が支援や研修機会を提供するとしています。
• The IT Companies rely on support from Member States and the European Commission to ensure access to a representative network of CSO partners and “trusted reporters” in all Member States to help provide high quality notices. IT Companies to make information about “trusted reporters” available on their websites.
• IT4社が、全EU加盟国の連携市民社会組織や「信頼できる報告者」の通知内容の向上を支援するためにその代表的ネットワークにアクセスしようとするとき、EU加盟国および欧州委員会は、これをサポートするものとする。また、IT4社は、「信頼性できる報告者」に関する情報を、自社のウェブサイト上で閲覧できるようにする。
市民社会組織のバックアップは4社ばかりがおこなうのではなく、EU加盟国や欧州委員会もおこなうことを定めています。
• The IT Companies to provide regular training to their staff on current societal developments and to exchange views on the potential for further improvement.
• IT4社は、自社従業員のために、直近の社会動向に関する研修を定期的に実施する。また、さらなる改善のために情報交換を行う。
4社が自社の従業員に対する教育もおこなうことを定めています。
• The IT Companies to intensify cooperation between themselves and other platforms and social media companies to enhance best practice sharing.
• IT4社は、ベストプラクティスの共有を促進するために、IT4社相互の協力、および他のプラットフォーム企業やソーシャルメディア企業との連携を強化する。
これもすでに述べられていることですが、これをデファクトスタンダードにしていく狙いもあるように読み取れます。
• The IT Companies and the European Commission, recognising the value of independent counter speech against hateful rhetoric and prejudice, aim to continue their work in identifying and promoting independent counter-narratives, new ideas and initiatives and supporting educational programs that encourage critical thinking.
• IT4社と欧州委員会は、自主的なカウンタースピーチが憎悪発言や偏見に対抗する上で有効であることを認識しており、今後も継続して、自主的カウンターナラティブや、新しいアイデアや取り組みを特定し、その活動を促すよう努める。また、クリティカル・シンキングを奨励する教育プログラムも引き続き支援する。
自社の従業員やユーザーに対する啓蒙についての方針が示されています。
• The IT Companies to intensify their work with CSOs to deliver best practice training on countering hateful rhetoric and prejudice and increase the scale of their proactive outreach to CSOs to help them deliver effective counter speech campaigns. The European Commission, in cooperation with Member States, to contribute to this endeavour by taking steps to map CSOs’ specific needs and demands in this respect.
• IT4社は、憎悪発言や偏見への対処に関するベストプラクティス研修を実施するために、市民社会組織との連携を強化する。また、市民社会組織が効果的にカウンタースピーチ・キャンペーンを実施できるように、支援の働きかけを拡大する。欧州委員会は、EU加盟国と協力して、これに関連する市民社会組織の具体的なニーズや要求事項を把握して、この取り組みを支援する。
前述のとおり、信頼に足る市民社会組織との連携が不可欠であると考えられており、それらに対する支援をおこなっていく旨が明記されています。
• The European Commission in coordination with Member States to promote the adherence to the commitments set out in this code of conduct also to other relevant platforms and social media companies.
• 欧州委員会は、EU加盟国と協働して、本行動規範で確約した事項の遵守に努める。このことは、他の関連プラットフォーム企業やソーシャルメディア企業との関係においても同様である。
民間だけの取り組みに終始するのではなく、国家や欧州連合に対しても努力を求めています。
• The IT Companies and the European Commission agree to assess the public commitments in this code of conduct on a regular basis, including their impact. They also agree to further discuss how to promote transparency and encourage counter and alternative narratives. To this end, regular meetings will take place and a preliminary assessment will be reported to the High Level Group on Combating Racism, Xenophobia and all forms of intolerance by the end of 2016.
• IT4社および欧州委員会は、本行動規範で公的に確約した事項に関して、その影響を含め、評価を定期的に実施することに合意する。また、透明性を高め、カウンターナラティブ、オルタナティブナラティブを奨励・促進する手法について継続的に議論していくことに合意する。そのために、定期的に会合を持ち、2016年末までに、「人種差別、排外主義、およびあらゆる形態の不寛容への対抗に関するハイレベルグループ(High Level Group on Combating Racism, Xenophobia and all forms of intolerance)」に対して予備的評価の報告を行うものとする。
今後さらにこの取り組みが有効なものであるように、継続的に議論を重ねていくことが約束されています。
前述しましたが、この取り組みは欧州にとどまるものではなく、日本語版においても利用規約等に盛り込まれています。
しかしながら、日本およびアメリカは必ずしも欧州ほど積極的にヘイトスピーチに対する法規制をおこなっているわけではありません。
日本においては、先ごろ、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」が可決されました。条文においては「本邦外出身者」に対するヘイトスピーチのみが定義されていますが、それ以外の人々に対するヘイトスピーチが容認されるものではないとする付帯決議もなされたという報道がありました。
一方、アメリカの立法、司法においては言論の自由が優先的な価値と見なされ、ヘイトスピーチを制限することについては消極的態度を取っています。
このように、ヘイトスピーチに対する法制度のスタンスは国や地域によって大きくことなり、国境を越えて利用されるインターネットサービスにおけるサービスの整合性をいかに担保するかの苦慮が、今回の4社の共同声明の中にも見て取ることができます。
参考文献:
エリック・ブライシュ『ヘイトスピーチ』
松井茂記『インターネットの憲法学 新版』
窪誠『ヘイトスピーチとは何か』